「この世の去り方」

先日、一週間に一度くらいの割合でおいでになっている患者さんから、「体がだるくて、治療にいかれそうも無いのでお休みさせてください。」と言う電話をいただきました。私は「お大事になさってくださいね。」と申し上げて電話を切りました。その電話がその方とお話した最後になるとは、予想もしませんでした。

というのも、その方は社交ダンスが大好きでほぼ毎日ダンスのレッスンをしていました。そして電話をいただく3日前にダンスパーティーで普通の方の三倍も踊られ、1年にデモンストレーションを10パーティー以上、15年間こなし、先生が福島県の方に移られてからは、月に2回は二泊3日位で福島までレッスンに行っているようなすごいタフな方だったのです。

その間、病気らしい病気はほとんどなさらず、せいぜい風邪を引くくらいの方でした。

ここまで書きますと、年齢は?と思いますよね。そんな生活をしている彼女はなんと八十才。誰も、彼女は90才どころか、100歳まで元気でいられるものと思っていましたし、「あの方があんなに頑張っていらっしゃるんですから、私達も頑張らなくてはね。」と、人生の目標、お手本という存在でした。

そのかたが、電話を下さった次の日突然入院されたと聞きました。

そして、一ヶ月も入院しないうちにお亡くなりになったのです。

ところが、その方のすごい所はその1ヵ月も無い間に、きちんと御自分の身の回りの整理をなさり、葬儀の細かい指示までして、さっと亡くなられたのです。

この見事さは「天晴れ。」としか言いようが無く、正直、葬儀の時も、悲しみよりも「素晴らしい生き方、この世の去り方を見せてくださってありがとうございました。」という感謝の気持ちの方が強かったです。
それと同時に、日頃私も、このような亡くなり方をしたいと思っていたので、それができた彼女がうらやましくもありました。

この世を去る日は誰にでも必ずやって来ます。その時、自分がこんなに冷静に見事に去る事ができるだろうか? 生に対する未練や人生の後悔はないのだろうか? 死に対する恐怖や痛みに耐えられるだろうか?
そのどれをとっても私には自信が無いのです。

せめてその日が来るまで、出来るだけ後悔の少ない(私のような凡人には、全く後悔が無いなんて考えられないので)生き方をしたいと思っています。

日々精一杯生きた結果が積み重なって「良い人生だったなぁ。」と思えるのではないかと私は思います。

娘たちよ、母は片付けが下手だから、家の雑多な物は残してしまうかもしれないが許してくれ!

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