「良い患者さんになろう 其の一」

どこの治療院でも、病院でも、実に様々な方々がいらっしゃいます。
そういう方々の中で、治療をしにくい患者さんが時々いらっしゃいます。
先日腰が痛いと言って来院された七十代の男性の方の話。

「腰が痛いんだよね。」
「どの辺がどういう風に痛いですか?」
「それがどこか分からないんだけど痛いんだよ。」
「およその場所でいいですから、手を当ててみてください。」
「うーん。良く分からない。この辺かなぁ。」
と言ってお尻のあたりに手をやっています。
「腰というよりお尻のあたりですね。」
「そうぉ?なんだか分からないけど痛いんだよね。」
「分かりました。じゃあちょっとみてみますね。」 とお答えして施術を始めました。

腰が痛いと言っておいでになって、実際にどの辺が痛いか手を当てていただくと、お尻だったり、尾骨の辺だったり、股関節だったりと実にいろいろなので、こういう方がいる事には慣れています。
ですから、体の歪み方、筋肉の様子、骨の状態等を調べて自分なりの施術の仕方を組み立てます。

ところが困ったのはこの後でした。
施術の途中今までの施術が患者さんの訴えに正確に施されているかどうか確かめるため、「少し動いてみてください。」とお願いしました。
そうしたらその方は起き上がって動いてくださいました。
そして 「まだ痛いなぁ。」とおっしゃるので 「今、どの辺に痛みがありますか?」と聞くと、今度は大腿(太もも)のあたりをさすっています。
「腰はどうですか?」
「分からない。」
「痛みはありますか?」
「分からないなぁ。」
わたしはどうしていいのか分からなくなりました。
私の施術がどのように影響しているのか。
効果があったのかどうか。
全く分からないのです。
もちろん、筋肉の状態から痛みがかなり軽減されている筈だという確信はあるのですが、本人が分からないことにはどうにもしようがないのです。

こういう風に書くと、「その人少し認知症が始まっているんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、その点は大丈夫そうなのです。
きちんと現役で何人も人を使ってお仕事をされているのです。
痛みという症状は表現するのも難しいですし、場所を把握するのも意外に難しいものだという事は、大勢の患者さんを通じてわかってはいるのですが、こういうケースは初めてで、本当に困りました。
やはりご自分の体ですから、どの辺が、どんな時に、どのように痛いかということをきちんと分析して、お医者さんや施術者に正しくご自分の状態を伝えられるようにすることが、いい治療を受けるのに大切なことです。

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